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やっぱり時間稼ぎだった
株価好調が意味するもの
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米中貿易交渉は、8月22~23にかけて行なわれたが、なんの成果もなかった。中国は従来通りの主張を貫き、米国の要求する不公正貿易慣行の是正については「ゼロ回答」である。
中国は最初から交渉をまとめる意思はなかった。国内の株式市場と為替市場の不安心理を抑えることに利用したに過ぎない。習氏に問いたいのは、こういう時間稼ぎすることによって、事態解決の糸口が得られるのか、という点だ。遅らせたところで、さらに窮地に立たせられるだけである。
やっぱり時間稼ぎだった
『大紀元』(8月21日付)は、「米中通商交渉再開 中国側の時間稼ぎー専門家」と題する記事を掲載していた。
(1)「米カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLA)の経済学者・兪偉雄氏は、今回(注:先)の協議と11月末の米中首脳会談は、『11月上旬の米国中間選挙を狙った中国側の時間稼ぎの計略だ』との見方を示した。中間選挙で米民主党が下院と上院のそれぞれ議院で過半数を占めれば、対中貿易政策を含むトランプ政権の各政策実施にストップをかけることができる。『中国当局がこれを狙っている』としている。兪氏は、「中国当局の狙いは失敗に終わるだろう。現在、共和党も民主党も、中国による米企業の知的財産権侵害に関して共通認識を持っている。中間選挙の結果と関係なく、トランプ政権は、貿易問題で引き続き中国に対して強硬な措置を実施していく」と判断している」
中国は、米国における対中感情がいかに悪化しているかについて、正確な認識がないようだ。民主党が中間選挙で勝利を得れば、トランプ政権の対中強硬路線を変更させられると誤解している。オバマ政権の対中政策が現在、批判されているのは融和的過ぎたという点だ。米国内の対中警戒論を軽視してはなるまい。
(2)「中国経済専門家の秦鵬氏は、米中貿易摩擦の本質は中国共産党政権が抱える構造的な問題であると分析する。『中国側が構造的問題の存在を認めれば、抜本的改革を迫られる。この改革は、共産党政権の根底を覆す可能性が高いため、中国当局はどうしても避けたい』。中国当局が今できることは時間稼ぎしかないという」
米国政府が、中国へ要求している点は、不公正貿易慣行の是正である。WTO(世界貿易機関)の基本原則を守れという点に尽きる。そうなれば、対米貿易収支が一方的な大赤字に
なることはない。中国が、WTO違反の不正ルールを止めれば、米中貿易収支は改善されるという主張である。ただ、米国の主張のうちでWTO原則の遵守は正しいが、二国間で貿易収支を均衡させるのは不可能である。あくまでも多国間での貿易収支調整が基本である。
中国が、WTOルールを守っていないことは事実だ。中国は、この点の是正を求められると、極めて苦しい立場に追い込まれる。「中国製造2025」は、他国の技術を窃取して、「産業強国」へのし上がろうとする「虫のいい」計画である。これは、習氏が「生涯国家主席」を目指す上で、重要なステップになっている。
米国は、この習氏の「出世ハシゴ」を外すように要求している。習氏は、自らの思惑からも簡単に応じられまい。中国が、技術窃取問題を認めれば、根本的改革を迫られる。「産業強国」路線の根底が覆される事態なになるのだ。中国当局はどうしても避けたいにちがいない。だが、技術窃取は許されない。
中国には、米中貿易戦争の解決策がない。時間稼ぎをするほかないという、哀れな状態へ追い込まれた。習氏の世界覇権狙いという「大言壮語」が招いた大失態だ。
『産経新聞』(8月23日付)は、「中国経済が長期減速に陥る事態も」と題する東京財団政策研究所の柯隆(か・りゅう)主席研究員の見解を掲載した。柯氏は在日中国人エコノミストである。
(3)「米側は、2000億ドル相当にも及ぶ第3弾の大規模制裁を準備している。これが発動されれば、中国経済は相当なダメージを受ける。短期的には、輸出にブレーキがかかって業績が低迷した企業がリストラに走り、雇用環境の悪化に伴う社会不安の増大という中国側が最も恐れる状況を招く恐れがある。長期的には、多国籍企業を中心に生産能力の一部を中国外に移す可能性もあり、中国経済が長期間減速する事態に陥りかねない」
米国が目下、準備中の第3弾である2000億ドル関税を発動すれば、中国の対米輸出に大きな被害が及ぶ。むろん、米国も無傷ではあり得ない。中国に依存する生活必需品が関税分だけ値上がりする。だが、米中どちらの被害が大きいか。それは、中国である。輸出企業の倒産による雇用減が起こるからだ。雇用減=失業者増加は、家計を直撃する。2017年までの中国家計債務の対可処分所得比率は107.2%に達した。この状況では、失業すれば住宅ローン返済が不可能になる。その結果、金融危機リスクが高まるのだ。
(4)「最悪のシナリオは、中国が国内改革をせずに報復カードを切り続け、とことんまで貿易戦争を続けることだ。中国が切れるカードは米側より少なく、報復措置に限界があるのは目に見えている。改革開放から40年間で、これほど強い外圧を中国が経済問題で受けたのは初めてのことだ。外圧をテコに国内の抵抗が強い国有企業改革を進めるなど、中国経済の『危機』を『好機』に転じさせることもできる。今、習近平国家主席の知恵が試されている」
現在は、改革開放40年の中で最大の危機である。市場機構を意図的に抑圧し、国有企業主体の経済体制へ逆戻りさせていることも響いている。米中貿易戦争は、中国の不合理な面を徹底的に追い詰めるだろう。中国が、時間稼ぎでお茶を濁すような生温い対応は不可能に思われる。
株価好調が意味するもの
米国が、中国に経済制裁を加えれば、中国の輸出減=国内生産減=世界の素
需要減という形で、いずれ米国の景気にも影響を及ぼすはずだ。米国景気だけが無傷ということはあり得ない。
米国は7月に中国の知的財産侵害に対する制裁関税を発動した。対象になった自動車や産業用ロボットなどは銅を使う。8月23日には電子部品なども追加された。貿易戦争で中国の生産活動が鈍れば、中国の景気がさらに冷え込む可能性がある。これが、回り回って米国へ達する。
現在の米国景気は、天を突く勢いである。トランプ大統領の大型減税で、企業と個人が経済的に潤っている。こうして、中国への対抗心が高まるばかりである。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月23日付)は、「快走続ける米株市場、日中欧を置き去りに」と題する記事を掲載した。
(1)「米国株式が史上最長の強気相場を記録するなか、他国市場の投資家はここまで恵まれた状況にはない。金融危機の最中にあった2009年3月9日にS&P500種株価指数が底値を付けて以来、世界の主要株式市場は同指数の後じんを拝している。日本、中国、欧州の株価指数は米株に比べて出遅れている。こうした格差は、米経済の力強さの証しでもある。米国と同国の銀行業界は、欧州よりも急速に金融危機から回復した」
米国株価の独走は、企業業績の好調さを反映したものだ。「イノベーション能力」の高さを証明している。習氏は、この米国が衰退する運命だと党内序列5位の、王滬寧氏に吹き込まれて信じ切ってきた。今、米国の吹き出すようなエネルギーをどのような思いで見ているか。王氏の言い分を信じた自分を恥じ入っていることだろう。
(2)「今回の米株の強気相場は、従来の常識を覆すものでもある。JPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、ハナ・アンダーソン氏は、『米国は金融危機で最初に打撃を受けた国であると同時に、最初に回復し始めた国でもある』と指摘。『米国で強気相場が既に進行していた時、他の市場はまだ多くの苦難の中を歩んでいた』と語る」
米国は、1929年の世界恐慌も見事に跳ね返して、第二次世界大戦後の世界経済をリードしている。2008年のリーマンショックも当初、回復までに100年かかるだろうと言われてきた。それが、わずか10年で現在の姿に復活した。習氏は、この米国の底力を軽視してはいけない。習氏は、中国で6年間も不動産バブルを仕掛けて、今や瀕死の重傷である。自らの経済運営能力の乏しさを恥じ入るべきだ。
(3)「米国と他の国・地域の差は今年に入って一段と顕著になった。米経済は2018年第2四半期に約4年ぶりの高い成長率を記録し、企業利益は急増している。それが他国市場を突き放す要因となっており、今後も続く可能性があるとみる投資家も多い。BNYメロンのサイモン・デリック氏によると、S&P500指数と日英独仏の各市場の相関性がこれほど低くなった例は過去20年間で2回しかなかった」
米国企業の利益は急増している。これが、他国の株式市場を突き放す理由だ。為替変動を加味しても、米国株に投資するのが最高のパフォーマンスを得られるという分析がある。米国経済の力強さゆえに、ときに「暴走」する。だが、それだけ潜在的な成長エネルギーがあることを意味している。中国経済の比ではない。
(4)「S&P500は9年前に底を打って以降、320%上昇している。これに続くのが日経平均株価の200%強の上昇。香港ハンセン指数は約150%の上昇となっている。一方、中国本土の上海総合指数は2009年3月からの上昇率が27%にとどまる。米中貿易摩擦がエスカレートするなか、ここ数カ月で両国の株価は一段と差が広がっている。上海株は今夏に弱気相場入りした。 一部の投資家は、米国株のバリュエーションが高過ぎると懸念している。トムソン・ロイターによれば、S&P500の予想PERは18倍と過去10年の平均を大きく上回っている。対照的に、上海総合指数の予想PERは10.2倍にとどまる」
リーマンショック後の底値から現在までの株価上昇率をまとめておく。
米国S&P500は、約320%の上昇
日経平均株価は、約200%の上昇
香港ハンセン指数は、約150%の上昇
上海総合指数は、約27%の上昇
同じ時間軸で見ると、米中の株価上昇率の違いは320%(米国)VS27%(中国)である。中国は、米国の10分の1以下である。習氏もトランプ氏に脱帽であろう。中国は、これだけの差がついている米国と、「力相撲」をやろうというのだ。中国は、怪我をするに決まっている。己の客観的な力を知らない中国が、米国との対決で嫌というほどそれを知らされるはずだ。
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(2018年8月27日)
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8. 66歳女性殺害事件について、犯行の動機(目的)
「その6」の続きで、「物取り」の可能性を考えてみると、
犯人は約5時間前に鉄パイプで男性を襲撃した際に部屋を見回しながら、
「あんたからとるものはないな」
と口では言いながら、それでも鉄パイプを振り下ろしてくるなど、物取り目的なのか、殺人目的なのか、その両方なのか、それとも別の意図なのか、判然としないところがあった。
鉄パイプ襲撃の時は「とるものはないな」と何かをとりたそうな、とるものがないことに不満げな口ぶりではあったが、
次に侵入したこの66歳女性宅もまた、(失礼ながら)外観からすればお金を持っていそうな家には見えないのだった。(口とは裏腹に、またしても、とるものはなさそうな家に入っている。)
女性の遺体はベッドの上に仰向けで、防御創はなく、殴打痕や刺創・切創は頭部と顔の前面に集中しており(刺創や切創が十数か所)、後頭部に目立った傷はなく、
この状況から、仰向けで寝ているところをいきなり致命的な攻撃を受け、抵抗する間もなく殺害されたものと個人的には推測され、
「金を出せ」「金はどこだ?」などのやり取りをする気など、犯人の頭には端(はな)からなかったかのようにも思える。
殺害した後で部屋を物色するつもりだったのかと思いきや、殺害現場には、「金の入ったポーチがそのまま残されていた」。
これらの状況を見ると、果たして犯人の目的の中に「物取り」の意図があったのだろうか?・・・と、疑わしく思えるところもある。
しかし、物取りが常に金持ちそうな家だけを狙うとは限らないかと。
この犯人の場合も、金持ちそうな家はセキュリティが高そうだとか、屋内に制圧の難しそうな人間が複数いそうだとかでスルーして、セキュリティの甘さ(侵入のしやすさ)や家人と対峙した時の制圧のしやすさ(住人の数が少なそうとか高齢そうとか)などを優先していたのかもしれず、
あるいは金持ちそうな家を狙わなかったのではなく、実際は金持ちそうな家のドアノブを回してみたりはしていたのかもしれない。
「金の入ったポーチを現場にそのまま残していた」という点についても、単に犯人がそのポーチの存在に気づかなかっただけで、他の場所からは金銭その他をとっているのかもしれず、
仮に何もとっていなかったとしても、それは単に、
「斜め前のパチンコ店の防犯カメラに(暗くて)何も写らないような時間帯に女性宅に入ったが(夜明け直前?)、殺害後にいざ物色という段階で思いのほか早く夜が明けてしまい、金品を漁りたい気持ちは山々だったが、日が昇りきる前に逃げなければということで、物色するのを断念して午前5時ごろに逃走した」
というだけのことだったかもしれず、
こうしたことを想定すると、金の入ったポーチがそのまま残されていたからといって、一概に物取りの目的を否定することはできないのではないかと。
また、物取りといっても、必ずしも金銭が目的ではなく、その他の物品が目的だった可能性もあり得るのではないかと。
その他の物品とは、例えば「顔を隠すための白マスク」であるとか、「電車の中で着替えるための衣類」とかが考えられるだろうか。
ここで思い出すのは、犯人が女性殺害の約5時間前に鉄パイプで男性を襲撃した時にはタオル様の布で口元を隠していたが、女性襲撃後に湯河原駅で防犯カメラに写った時には、口元に普通の白い紙マスクをしていたことだった。
もしこの白マスクがもともと犯人所有のものであったなら、男性襲撃の際にはそれ(白マスク)を口元に装着していた可能性が高いのではないかと思うのだが(口元を布で覆えば明らかに不審者だが、白マスクなら見た目が普通だから、襲撃前後に路上で誰かに目撃されても怪しまれずにすむ)、
犯人は男性襲撃の時には口元にタオル様の布を巻いており、白マスクはしていなかった。
とすると、犯人は、男性襲撃の時点では白マスクを持っていなかったのではないかと思うのだが、その犯人が、約5時間後に女性宅を出て湯河原駅の防犯カメラに写った時にはなぜか白マスクをしていたのである。
とすると犯人は「男性殺害に失敗して逃げた直後」から「湯河原駅の防犯カメラに写った時」までの間に、この白マスクをコンビニその他どこかで調達したのではないかと想像するのだが、
一つの可能性としては、早朝まだ暗いうちに湯河原駅に向かう途中とかで(駅の防犯カメラへの警戒から)顔を隠す必要性を感じ、女性宅に侵入してこれ(白マスク)を奪った・・・ということが考えられるのではないかと。
女性は66歳と高齢で車いす生活でもあり、感染症の予防ということで、使い捨てマスクのたぐいは当然に常備していたのではないだろうか。
さらに犯人としては、下車駅にある防犯カメラを欺く必要性を感じたかもしれない。
それができなければ下車駅が(つまり多分に自分がどこに住んでいるかが)ばれてしまうことを思えば、犯人にとっては切実な問題だった。
下車駅をごまかそうという場合に考えることの一つが、
「電車内で全く違うタイプの服装に着替える(変装する)こと」
ではないかと。
犯人の場合それは「電車に乗る前に、変装用の衣類を奪う」ことを意味したかもしれない。
このあたりの流れを妄想してみると、
犯人は4月20日(月)深夜から翌21日(火)の未明にかけて—犯人の自宅等はこのエリアにはなかったという設定なので—身を寄せるところもなく同エリア内の公園であるとか建物の陰であるとかに身を隠し、警察の目を逃れながらようやく午前4時台を迎えたと、
4時台が来た、何時何分かはわからないが東京方面の電車がそろそろあるはずだ、暗いうちに湯河原駅に入ろうと駅方面に歩いている途中で、ふと、
「駅に防犯カメラがあり、それに素顔を捕捉されるかもしれない」
「
降りた駅でも防犯カメラに写るかもしれない」
とかのことが脳裏をよぎった。
そこで、「顔を隠すマスク」や「変装用の衣類」の調達の必要性を感じた犯人は、駅西側の裏路地に入り、侵入できそうな家を探してみたところ、小さな平屋の家(つまり女性宅)を見つけ、
その古めかしい外観や玄関に設置されたI型の手すりなどから「高齢夫婦か高齢者の一人暮らしだろう」と当たりをつけて侵入した。
たまたま玄関の鍵が開いておりあっさり引き戸が開いたのか、それともガラスを割りうる何らかの道具を持っていた、あるいはそういったものを拾うか石ころを拾うかしてガラスを割り、侵入したのが午前4時半ごろだった。
(ガラスの一部が割れており外から鍵を開けられる状態だったとの情報もあり、また消防隊が消火活動の際にガラスを割ったとの情報もある。)
丸腰だったかどうかはわからない。丸腰だったからこそ高齢者が住んでいそうな家を狙ったのかもしれないし、男性襲撃の時には鉄パイプがあるので使わなかっただけで実はナイフも所持しており、これを手に侵入したのかもしれない。
あるいは、男性襲撃の時に使った血の付いた鉄パイプを桜木公園に捨てた後で、犯人的にはまだ食い足りなく感じ、次を狙うべく凶器になり得るなにかしらの鈍器をどこかで拾ってリュックに忍ばせていたのを、朝方の女性宅侵入時に使用したのかもしれなかった。
入ってみると高齢の女性が一人で仰向けに寝ていたので、鈍器が先だったか刃物が先だったかは不明ながら—おそらく鈍器による殴打が先だとは思うが—凶器を用いて真っ先に殺害した。
(死亡推定時刻は午前5時ごろ。死因は頭がい骨骨折に伴う脳挫滅。鈍器による殴打と刃物による切り付けの2種類の攻撃を受けており、刃物による刺創・切創が顔の前面に数十か所。後頭部に目立った傷はなく、防御創もなかった。状況的に、犯人の侵入直後に仰向けで寝ているところをいきなり鈍器や刃物で頭部~顔面部を攻撃され、抵抗する間もなく殺害された可能性が高いのではないかと。このあたりは、男性襲撃の際に問答無用で頭部に鉄パイプを振り下ろしてきたあのメンタリティに通じるものがあるかもしれない。)
高齢女性の一人暮らしだったが、どうにか犯人にも着れそうなサイズの衣類も見つかった。
白地に青チェックの大きな紙袋も目に留まったので、これに奪った衣類を詰め込んだ。
(鉄パイプによる男性襲撃の時に大きな紙袋を持っていたという情報はない。その時はどこかに隠していたのかもしれないが、女性殺害時に奪った可能性もあるかと。)
紙袋はかさばったが、中身が衣類だったので 左手一本でも楽に持てた。
(湯河原駅の改札を抜けるときに左手だけで紙袋を上に掲げるような仕草をしている。また、防犯カメラに写った時に着用していた足首を絞ったように見えるズボンも、女性宅から奪った衣類の一つだった可能性もあるかと。それゆえにサイズが合わず、足首丸出し状態に。)
(紙袋には何かが詰め込まれているように見える)
死因が「頭がい骨骨折に伴う脳挫滅」なので、それは鈍器による殴打が原因だったかもしれず、犯人が侵入直後に仰向けで就寝中の女性の頭部を鈍器で攻撃し脳挫滅で死亡させたのだとすれば、顔への刃物傷は鈍器の殴打による死亡後に付けられたものかもしれず(防御創がなかった)、
だとすると犯人は意外に返り血は浴びていないのかもしれないが、少なくとも刃物で切りつけた手には血が相当付着したのではないかと思われ、殺害後にそれを洗い流すとかをしたと思われた。
玄関に鍵をかけて逃走していることから、鍵も探したことと思う。
そうこうするうちに、侵入から10~20分程度は経過した。
薄明かりがさしてきたので急いで家を出たのが午前5時ごろであり、玄関を出て湯河原駅方面へと向かう姿が、女性宅の斜め前にあるパチンコ店の防犯カメラに写っていた。
湯河原駅の防犯カメラの人物(このブログ的には「犯人」)は、当時の東海道本線のダイヤからして、
「午前5時45分発の東京方面、宇都宮駅(栃木県)行き電車に乗った可能性が高いとみられている(産経)」
と事件当初から報じられているが、
その後のニュース動画の中には「乗った」「乗ったことが新たにわかった」と断定的に報じているものもあり(おそらく警察は当該電車に乗り込む際のホームのカメラ映像を持っているのではないだろうか?)、この電車に乗ったのは確定とみていいのではないかとも思うが、
だとすると犯人は午前5時過ぎに湯河原駅に到着し、子供切符で自動改札を抜け、午前5時45分発の東京方面・宇都宮行きの電車に乗るまで—この電車は午前5時39分熱海駅始発で湯河原駅には1分停車する—湯河原駅のホームで40分程度待ったものと思われた。
殺害直後に最寄りの駅のホームで40分も待つとは、駅に着くのが早すぎたのではないかとも思われ、そのあたりから、犯行は細かな時刻を意識しながらの綿密なものではなく、行き当たりばったりなものだったという推測も可能ではないかと。
いずれにしても、金が目的にせよ、それ以外の物品が目的にせよ、犯人に物取りの意図があった可能性は普通にあるのではと感じた。
そしてもし、「顔を隠すための白マスク」や「変装用の衣類」を奪う意図で女性宅に入ったということが事実なら、全体としては雑に行動しているように見えながら、実は意外に細かいところに気を回す(小細工を弄する)タイプの犯人なのかもしれない。
仮にそうだとすると、例えば「被害女性の顔まで布団をかぶせていた」という犯人の行為があったが、あの行為についても、「その種の行為をするのは顔見知りによる犯行の場合に多い」と一般的に言われていることを知っていて、
あえて偽装のために(顔見知りでもなんでもなかったが)顔まで布団をかぶせた・・・という可能性もあるのでは、と思えてくるのだった。
—–
ただ一方で、犯行には「物取り目的」だけでは納得しにくい点もあった。
物取りのための殺害というにしては、殺し方が特異すぎやしないか、と思うのだった。
女性の死因は頭がい骨骨折に伴う脳挫滅。
遺体はベッドの上に仰向けで、防御創はなく、殴打痕や刺創・切創は頭部と顔の前面に集中しており(刺創や切創が十数か所)、後頭部に目立った傷はなかった。
腕を振り回して抵抗すれば、たとえ「腕に刃物が当たって防御創がつく」ということがなかったとしても、(防御のために振り回した腕が)犯人の腕などのどこかに当たって内出血痕とか擦過痕とかがつきそうに思うのだが、そういった痕跡があったという情報もない。
ベッドに一人で寝ている66歳女性を殺害するというのであれば、まずは「扼殺」あたりが考慮されるのではないかと思うが、首や口元への圧迫痕があったという話も聞かない。
どうも状況的に、仰向けで寝ているところをいきなり頭部や顔面部ばかりを鈍器や刃物で襲われたようであり、無抵抗のまま殺害された可能性が高いのではないかと。
しかし、「頭部や顔面部にいきなり集中的に攻撃を仕掛けて殺害してしまう」というところまでなら、「鈍器か刃物を凶器として持っている場合で、最初から殺しにかかってくるタイプの強盗殺人」ならあり得なくはないかもしれない。
問題はその次で、女性の右目の上あたりの額には、刃が隠れるほど深々と包丁が刺し込まれていたのである。
(包丁は女性宅にあったものを使用したとみられており、ここでも指紋の付着には気を付けたのか、犯人の指紋は付着していなかった)
仮に物取りのための殺害だったのであれば、「額に深々と包丁を突き立てておく」というのは、なんの必要性に基づいた行為だったのだろうか?
物取り目的というにしては、まずそこがわからない点だった。
(いわゆる精神異常者かどうかは不明ながら、少なくともかなりの変人だとはいえそうな犯人による犯罪において、「普通」の感覚で行為の必要性を問うのがそもそも野暮なのかもしれないが。犯人は「人は脳を刺さないと死なない」という感覚の持ち主だったのかもしれず、仮にそうなら、額に深々と包丁を刺すという行為は、犯人的には殺害のための当然の行為だったかもしれないので・・・。以下、犯人がそういう変わった感覚の持ち主だった可能性は考慮に入れずに続けてみたい。)
また、「頭部や顔面部にばかり刺し傷・切り傷が集中している」という点も、物取り目的での加害としてあり得ない状況とは思わないものの、
しかしこの66歳女性殺害事件に限って言えば、これを物取り目的での加害と見ることには、なにか違和感を覚えるのだった。
例えばこれが、物取り目的の犯人が被害者の上に馬乗りになり、仰向けの被害者が手を振り回して刃物を防ごうとしたり大声を出したりと激しく抵抗している状況なら、
犯人が素肌の露出している顔面部ばかりを執拗に攻撃した、その結果、頭部や顔の前面にばかり刺し傷・切り傷が集中した・・・という状況も理解できるような気はする。(この状態でも、首や胸にも多少の傷は付くのではと思うが)
しかしこの湯河原の事件の場合は、女性に手を振り回して抵抗したような形跡は見られない。防御創はなく、後頭部にも目立った傷はなかった。内出血痕や擦過痕があったという話すら聞かない。
その状態で、頭と顔の前面にばかり数十か所の刺し傷・切り傷があったというのである。
妄想の世界になってしまうが、女性は、腕など振り回せず、体をよじることもできない完全に無抵抗な状態で顔の前面に何度も切りつけられているのではないだろうか?
つまりおそらく、最初に鈍器による一撃または数撃を受け、気絶するか、場合によっては脳挫滅で事切れた後に、顔面部への刃物による執拗な切り付けが行われたのではないかと。
鈍器で殴打し、相手が(気絶か死亡かは別として)動かなくなり、そこにとどめとして刃物で切り付けるというのであれば、普通は首か心臓を狙うのではないかと思うのだが、この犯人はその状況で首や心臓ではなく、顔面部に執拗に切りつけたのではないかと思えるのだった。
仮にこれが事実だとすれば、「額に深々と刺さったままになっていた包丁」と合わせて、物取り目的での殺害というにしてはあまりにも特異というのか、偏執性が際立っているのではないかと。
とするとこの犯人には、実はもともと「物取り」といったありきたりの意図はなく、単に「誰でもいいから人を残酷な形で—しかも頭部や顔に集中的に攻撃を加えるような形で—殺したい」という目的のみで女性宅に侵入したか、
あるいは、犯人の中ではそういった欲求と並んで「金品を奪いたい」という欲求も混在しており、その両方を満たすべく女性宅に侵入したとみるべきなのだろうか?
「人を殺したい」という欲も併せ持っていたと解すると、頭部・顔面部への執拗な攻撃は、約5時間前に鉄パイプで男性を殺害し損ねて欲求不満に陥った犯人が、その憂さを無抵抗な高齢女性相手に爆発的な形で晴らしたものであり、
額の刃物は(犯人にとっての)いわば本懐を遂げた昂ぶりの中で自らの行為を誇示したものと見えなくもないのだった。
思い描いていた通りの形で人間を殺害したことで一時的な満足感を得たことや、思いのほか早く空が白み始めて念入りに物色する余裕がなかったことで、
とりあえずはマスクや変装用の衣類など必要なものだけ奪えばいいと考え、手に付いた血を洗い流し、それらを奪って急ぎ家を出たのだとすれば、
「金の入ったポーチが現場にそのまま残されていた」
という状況への、一つの説明にはなるかもしれない。
いずれにしても犯人は湯河原駅を午前5時45分に発車し東京を経由して栃木の宇都宮駅に到着する東海道本線の電車に乗ったと思われ、
電車の中で着替える、子供切符を用いる、その他何らかの工夫を織り交ぜることにより、行き先をごまかし下車駅の改札を抜けることに成功したものと思われた。
あの白地に青のチェック模様の大きな紙袋は、持っていればそれだけで犯人を特定する目印にはなりそうな感じではあったが、
犯人は電車内で脱いだ上下の衣類に加えて、あの紙袋も折りたたんで背中のリュックに入れたのではないだろうか?
よって、電車を降りるときにはおそらく全く違う服装になっており、なおかつ
物は(かなり膨らんだ)背中のリュック一つといういで立ちだったのではないかと想像する。
頭には帽子をかぶるとか、下手したら髪型も変わっていたかもしれない(その場合は髪を切った痕跡が電車内に残ると思うが)。
犯人は乗車時と同じように、下車時も子供切符で改札を抜けたのだろうか?(下車時は定期その他だった可能性もあるが)
仮に犯人が下車時も子供切符で降りたのであれば、(変装していたと思われるので)下車駅の防犯カメラが欺かれたのは仕方ない面もあるかもしれないが、
犯人を呼び止めるチャンスだったはずの子供切符(の警報やランプ)が、乗車時も下車時も、呼び止めのためにまったく生かされなかったのだと思われ、残念なことだった。
生ぬるい警報音では不正乗車をする側も全く萎縮せず、駅員も慣れや怠慢で見て見ぬふりをしてしまうというのであれば、いっそ警報音を、
「子供切符だぞぉー!」
という野太い男性の叫び声に変えてみてはどうかと、わりとまじめに思ったりもする。
児童が大勢改札を抜ける通学時間帯や休日は改札が妙な雰囲気になるかもしれないが、
不正乗車やその見逃しは劇的に—本当に劇的に—減るのではないかと思うが、どうだろうか。
—–
● まとめ
以前に、母親の頭部や顔面、胸部を金属バットで滅多打ちにして殺害し、その時に味わったかつてない快感が忘れられず、のちに大阪で27歳と19歳の姉妹を殺害し逮捕されて死刑になった山地某というゴト師グループの一員がいた。
湯河原の犯人には、どことなくこの山地某を思い起こさせるものがあるような気がした。
比較的最近に発生した、凶悪かつ未解決の事件のわりには、情報が少ないようにも思った。
先日、八王子のスーパーナンペイ事件について、捜査本部が発生から23年後に「犯人が履いていたと思われる靴」についてA社・B社などとメーカー名を伏せて公開し、「何をいまさら」「解決する気があるのか」等の批判を浴びていたが、
湯河原の事件も、警察は靴のメーカーは特定済みだろうと思うのだが、未解決のまま3年が経過する中で、いまだに靴のメーカーすら公表されていない。
「犯人に心当たりがありますか?」と問う一方で靴の銘柄を秘匿する意味がわからない。
記憶の新しいうちに、警察からもなるべく多くの情報を出したうえで、人々からの情報提供を募ったほうがいいのではと思う。
もっと詳細な部分がわかればと思う情報が二つあった。
一つは「鉄パイプで襲撃された61歳男性の証言」であり、もう一つは「湯河原駅の防犯カメラ映像」だった。
61歳男性は、不慮の事故や重い病気にでも罹患されない限り、まだご存命かと思う。
ところがこの貴重な男性の証言が、ご本人は「10分ほども(犯人を)諭しただろうか」と仰っているのに、本当に、数行とかの断片的なものしか伝わっていない。
このまま男性の証言が断片的なものしか伝わらず、事件が未解決のまま、男性が亡くなるとかの事態にでもなれば、
その証言の全容を一般市民の側で共有するチャンスは、永遠に失われてしまうのだった。
警察からの情報公開が期待できないのであれば、メディアがこの被害男性をもう一度取材して、
約10分にも及んだという犯人とのやり取りを(男性の記憶の範囲で)一言一句たがわず正確に再現し、
思いつくままに列挙して申し訳ないですが、例えば、犯人が最初に立っていた電柱の陰はどの場所なのか、路上の時点で覆面をしていたのかそれとも素顔だったのか、
路上の時点で手に鉄パイプ様のものを持っていたのか、路上の時点でのリュックや紙袋の携帯はどうだったのか(そして部屋に押し込んできたときはどうだったのか)、
犯人の見た目年齢はどうだったのか、身長体形はどうだったのか、上下の服はどんな感じだったのか、靴下は履いていたのか、靴は何色のどんな靴だったのか、
犯人の目元は例えば芸能人で言えば誰に似ていたとか、声は高いとか低い、太い細い大人びている子供っぽい、形容の仕方は色々あると思うがどんな感じであるとか、
しゃべり方は速いであるとか遅い、ボソボソしゃべるであるとか、どもるであるとか語尾がどうであるとかの何らかの癖がなかったかどうか、方言を感じたかどうか、
左右どちらの手で鉄パイプを振り下ろしてきたのかとか、組み合ったときにどれくらいの力を感じたのかとか、
犯人が女である可能性についてはどう思うかとか、殺害と物取りのどちらに犯人の主眼があるように感じたかとか、
とにかく男性による犯人の情報をもう一度余すところなく取材し、男性が犯人と対峙した時の状況を可能な限り詳細に再現し、
あわせて、湯河原駅の防犯カメラに写った犯人の一挙手一投足を含めて、
事件の全容を犯罪心理学とか行動分析学の専門家の視点も交えて分析したものを記事化しておいてくれないものだろうかと思う。
事件は2015年4月の発生と比較的新しい。
犯人はまだ生きて国内にとどまっている可能性が高く、情報さえ広めれば犯人に心当たりのある人物が現れるかもしれないことを思えば、
貴重な生存者の証言や防犯カメラの映像が断片的にしか(あるいは非常に限られた範囲でしか)伝えられていない現状は、
あまりにも残念過ぎるのではないかと思う。