太平洋 何も足さない、何も引かない
なるということ
ワーキングプアが選ぶ超イカした太平洋10選
「少しね。」
「本当に少し?」
「…忘れたわ。」
二人はしばらく黙った。
鼠はまた何かをしゃべらなければならないような気がした。
「ねえ、
人間は生まれつき不公平に作られている。」
「誰の言葉?」
「ジョン・F・ケネディー。」
人間は生まれつき不公平に作られている
1962年の記者会見での
ジョン・F・ケネディの言葉
予備役を招集してベトナムに送り込む決定をしたことへの
抗議のハンストに対して答えた時の言葉
There is always inequity in life.
Some men are killed in a war,
and some men are wounded,
and some men never leave the country,
and some men are stationed in the Antarctic,
and some are stationed in San Francisco.
It’s very hard in military or in personal life to assure complete equality.
Life is unfair.
Some people are sick and others are well.
第二に、
人生には常に不平等があります。
何人かの男は戦争で殺され、
何人かの男は負傷し、
何人かの男は決して国を去りません、
そして何人かの男は南極で駐屯し、
何人かはサンフランシスコに駐留しています。
完全な平等を保証することは、
軍事的または私生活において非常に困難です。
人生は不公平である。
病気の人もいれば、
健康な人もいます。
まあその通りだから異論はない
逆のことを述べている奴らに比べたらとっても正直な発言だ
全ての人間が平等である1つの場所がある…死ぬ時である
と言ったのはサムナーだったかな?
これもまたその通りだと思う
人は生まれつき平等であるとかよりもよっぽど良い
でも死だって本当は不平等だってボクは思うけどな
だって誰もが望んだように死ねるわけではないんだから
理不尽な死とか冗談みたいな死とか望んだ死とか強制された死とか…
要は死ぬ時だって実は色々あって決して平等ではない
死が誰にでも訪れると言う意味では平等かもしれないけど
死自体は平等ではないのだ
ただそんな不平等の中でも
そこそこ幸せな人生だったよってボクは言えるようにしておきたいとは思う
さて『鼠』からこの言葉が出たのは
『鼠』が自分だったらこんな小説を書くと語ったシーンの中でだ
船が太平洋で沈没して浮輪につかまって海を漂っている時に
同じように浮輪につかまった若い女に出会う
女は島のありそうな方へ泳いでいく
そして二日と二晩泳ぎ続けて島に辿り着く
これって第二次大戦の時にパトロール魚雷艇の艦長だった
ケネディの乗った魚雷艇が日本の駆逐艦に衝突され海に投げ出された後
負傷した仲間を命綱で結びつけて
6キロ泳ぎ小さな島に辿り着いた時の話みたいだ
これでケネディは英雄となり全米に名を知られることとなる
でもこれは父親が色々と手をまわしたからだ
ケネディが幼いころからコンプレックスを持ち続けていた兄が戦死したことで
父親の期待はケネディへと移りやがて政界入りとなるわけだ
ところで『ジョン・F・ケネディー』と言えば
ボクはどうしたってラウシェンバーグのこの作品を思い出さずにはいられない
そう1970年の彼の作品『Signs(徴候)』だ
かなり有名な作品だから知っている方も多いだろう
暗殺されたジョン・F・ケネディの横顔は黒い枠で囲まれている
その鼻先にはリキテンシュタインの作品の欠片か
その下にはケネディが狙撃される瞬間を捉えたザプルーダー・フィルムの画像
そこにはブルーのベン・デイ・ドットが11個
同じく暗殺された弟のロバート・F・ケネディ
その何かを制するように見える左手は負傷した兵士にかかっている
その下には血まみれになって倒れている黒人男性
その手はマーティン・ルーサー・キング牧師の棺に置かれている
左手にマイクを持って熱唱する赤いジャニス・ジョプリン
その上にはピースサインを高々と掲げる若者達
手に銃を持った兵士が乗っているジープ
その上には平和集会集会か何かだろうか手に蝋燭を持つ人々
兵士の銃とジャニスの間
ケネディの額の辺りはグレーで塗りつぶされている
アポロ11号で月面に降り立った宇宙飛行バズ・オルドリン
そのヘルメットのバイザーに映る月面への第一歩を印したニール・アームストロング
それを傾かせるように書かれたR.R.のサイン
最後に置かれたかのような透明なガラスのペーパーウェイト
細部を見ればそういうことだが全体からは何か強烈なエネルギーを感じる
基本的には死の匂いがプンプンしているのだけれど
それでもエネルギーを感じるのは赤いジャニスがそこに居るからなのかもしれない
月面着陸をしたバズが描かれているかもしれない
でもバズの手は見えない顔も見えない
それは果たして未来なのか死にかけたアメリカの象徴なのか
この作品は1970年のものだ
ジャニスが亡くなる前に完成したのだろうか?
そうならばジャニスは死が渦巻いている中で赤い火山のような存在になる
キング牧師の遺体から生がほとばしるジャニスへと上に向かう構造になる
でも結局ジャニスも1970年10月4日に亡くなっている
そうなると上に向かう構造から一気に輪っかが閉じられた構造になる
だから最後に置かれたように見える丸いペーパーウェイトがあるのか
それが正しいとか間違っているとかは抜きにして色々な勝手な見方が出来る
ところでラウシェンバーグはこの作品以外でもケネディを使っている
いくつか見てみるとこんな感じだ
そうそう村上龍の1986年の本『ポップアートのある部屋』の中で
こ
作品を使った物語が出てくる
そしてこの作品のポストカードが本の中にあって
ボクはそれを切り取って部屋に飾っていた時期がある
なぜだか激しくこの作品に惹かれたのだ
そして今でこそもう激しく惹かれるわけではないけれどこの作品は相変わらず好きだ
ただ結局そのポストカードは何処かに消えてしまった
何回かの引っ越しの中で無くしてしまったんだろう
ボクの持っているのは文庫本なのだが本来収まっているべき場所に
もう『Signs』はないのだ
ただハードカバーでもう1度手に入れたので
そこにはきちんとこの作品が挟まれている
多分これをまた切り離して飾ったりすることはないだろう
たまに本の中で眺められれば良いのだ
さて曲にしよう
今回はやはりジャニスになるよね
ちなみにこの『Signs』で使われているジャニスの写真は
週刊誌『Newsweek』の1969年5月26日号の表紙のものだ
衣装からするとこれって1968年に開かれた
『Newport Folk Festival』のものだろう
その時の音源があったので聞いてみよう
曲は『Ball and Chain』
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